12月6日、沖縄本島の南方の海上で、中国のJ-15戦闘機が、領空侵犯の監視を行っていた自衛隊機・F-15戦闘機2機に対し、2度にわたってレーダー照射したことが大きなニュースとして問題視されています。このレーダー照射によって、自衛隊機は具体的にどのような状況になるのか? また、その時、機内のパイロットが聞いた「警告音」とは一体どのようなものだったてのか? 本記事で詳しく解説します。

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【経歴詐称疑惑】片桐もとゆき伊東市議「元パイロット」は間違い





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レーダー照射された自衛隊機はどうなる?機内に響いた警告音とは?
12月6日、東シナ海から沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を南下し、沖縄本島の南方海上に到達した中国の空母「遼寧(りょうねい)」から中国のJ-15戦闘機が発艦しました(飛び立ちました)。

日本防衛省・統合幕僚監部, CC BY 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0, via Wikimedia Commons
発艦は公海上で行われましたが、日本の防空識別圏内での活動だったことから、沖縄県の航空自衛隊那覇基地より、F-15戦闘機2機が緊急発進し、中国戦闘機の領空侵犯を監視しました。
この監視活動の最中に、中国のJ-15戦闘機は、12月6日16時32分~35分にかけて、日本の航空自衛隊機の1機に対し、3分間に渡ってミサイルを誘導する際に使用される火器管制レーダーを照射しました。(※12月14日配信「北海道新聞」の情報参照) この状態は、いわゆる「ロックオン」状態のことで、ミサイルが発射されれば撃墜される事態になったことを意味します。
さらに、12月6日18時37分~19時8分にかけて約30分間、中国のJ-15戦闘機はもう1機の日本の航空自衛隊機に対し火器管制レーダーを照射しました。(※12月14日配信「北海道新聞」の情報参照) この約30分間の火器管制レーダーの照射は極めて異常な行為です。なぜ異常行為といえるかは後述します。
一般の方々には、戦闘機が「レーダー照射」された状態がどんなものなのか? 想像することは非常に難しいかもしれません。中には、上空の中国の戦闘機が自衛隊機に対し、レーザーポインターのような眩しい光をパイロットに照射する光景を想像した人もいたかもしれません。
しかし、
今回問題にされている
戦闘機の「レーダー照射」は、
「レーザー光線の照射」とは
異なります。
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戦闘機の「レーダー照射」とは?
戦闘機の先端に搭載されるレーダーには、
切り替えによって
「探索モード」と「火器管制モード」の
2種類があります。
戦闘機の先端に搭載されるレーダー
| 探索モード(Seach Radar) | 火器管制モード(Fire Control Radar / FCR) |
| 広い空域をスキャンして目標を捜索する | 特定の目標を追尾(ロックオン)し、ミサイル発射や射撃のための正確なデータを取得する |
| レーダービームを左右に振って広範囲を監視 | 狭いビームで一つの目標を継続的に照射 |
| 複数の目標を同時に探知可能 | 高精度な距離・速度・方位情報を取得 |
今回、自衛隊機が照射されたのは、「火器管制レーダー」と考えられるため、ミサイルが発射される一歩手前の状態であったと考えられます。中国のパイロットがミサイルを発射するつもりはなくても、万が一、何かの拍子に発射ボタンに触れてしまえば、ミサイルが発射され自衛隊機が撃墜されてしまう危機的状況だったと言えるでしょう。
戦闘機が「火器管制レーダー」を照射されるとどうなる?
戦闘機には敵機からのレーダー照射を検知するためのRWR(Radar Warning Receiver/レーダー警告受信機) も搭載されています。パイロットは、自身が操縦する戦闘機にレーダーが照射された際、それを警告音で察知することができます。
今回中国の戦闘機からレーダー照射されたのは、沖縄県の航空自衛隊那覇基地の第9航空団のF-15J(一人乗り) または、F-15DJ(二人乗り) のどちらかの戦闘機だと考えられます。F-15Jは日本の航空自衛隊用に生産されたモデルで原型はF-15Cになります。同様にF-15DJの原型はF-15Dです。
Youtubeに自衛隊機F-15Jの原型となる、
F-15CのRWR(レーダー警告受信機)の
警告音が見つかりました。
※F-15DのRWSの警告音は不明。
F-15C戦闘機のレーダー警告音
| New Contact 操縦している戦闘機に探索レーダーが照射されたのを検知した際の警告音 | ピー、ピー(レーダーが戦闘機に当たるたびに鳴る。間隔があいている) |
| Locked 操縦している戦闘機に火器管制レーダーが照射されたのを検知した際の警告音 | ピ──────(ロックオンされレーダーが連続して戦闘機に照射されるので警告音も連続したピー音となる) |
| Launch 操縦している戦闘機にミサイルが発射されたのを検知した際の警告音 | ピロ、ピロ、ピロ、ピロ、ピロ、ピロ(最大限の警戒音が鳴る) |
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今回の件では、中国の戦闘機から約30分間に渡って自衛隊機が「火器管制レーダー」を照射し続けられたという事なので、自衛隊機の機内では、あの「ピ────」の警告音が約30分間、鳴り続けていたという事になります。これは、中国側のかなり常軌を逸した行為と評価できますよね。
パイロットは、この死と隣り合わせの緊迫した警告音の中、正気を保ち続け、任務を遂行することは並大抵の精神力ではなかったことと思われます。ニュース等では「相当のストレスがあったはず」と報じられていますが、「ストレス」と表現されるレベルでは到底なかったと考えられ、パニックに陥っていても不思議ではない状況でした。
一般人の感覚では、この危機的状況が理解しずらい状態ですが、軍事の世界では「火器管制レーダー」を照射されるという事は、暴漢に拳銃を頭に突き付けられたことと同等と言えます。

milanmarkovic78 が撮影した画像(加工して掲載)
暴漢は撃つ気がなかったとしても、拳銃を頭に突き付けたことで「さつ人未遂罪」が成立する可能性が高いですし、何らかのちょっとした衝撃で、引き金が引かれて弾が発射される可能性もないとは言えません。戦闘機を操縦していて敵機から「火器管制レーダー」を照射されたら、大半の場合はそこで致命的な事態になると言っても過言ではありません。
日本の自衛官が、どうにかして生き延びようと反撃に転じたとしても不思議ではない状態だったという事です。しかし、そこで反撃すれば、中国に日本を攻める大義名分を与えかねず、大きな日中紛争に発展する可能性がありました。そこをじっとこらえて、反撃しなかったことで、今日も日本の平和が保たれているのです。この時のF-15J(F-15DJ?) の「パイロットの忍耐と功績」はノーベル平和賞にも匹敵する非常に大きなものといえます。
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まとめ
中国の戦闘機が日本の自衛隊機に対して、レーダー照射したことが問題になっていますが、本記事では、このレーダー照射という行為がどんなに危機的状況であったのかについて、分かりやすく解説しました。
中国は、太平洋に出る際のルートとして、沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡を進むことが一般的です。中国の空母がこの海峡を通過する前後に、戦闘機を発艦すれば、領空を侵犯されないように航空自衛隊が戦闘機を飛ばして監視するケースが多くあります。今後も似たようなケースが繰り返される可能性がないとは言えません。
日本の自衛隊が、レーダー照射を受けて、反撃に転ずることは考えにくいですが、中国の戦闘機が安易に「火器管制レーダー」を照射(ロックオン) しているとしたら、何かの拍子で意図せずともミサイルが発射され、自衛隊機が撃墜されるという悲劇が起こりかねない状況になっていると言わざるを得ません。ニュースの報道がこの危機的状況を正確に報じていないことから、日本人の多くがこの危機的状況に気づいていないと言えます。
沖縄県の航空自衛隊那覇基地の第9航空団の自衛隊員の方たちは、日々命がけの任務にあたっており、頭が下がるばかりです。今後も日本の最前線の国防、よろしくお願いいたします!
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