2025年12月15日に東京・赤坂で起きた個室サウナ火災で、サウナ室に取り付けられていた非常用ボタンの電源が日常的に切られた状態で営業しており、フロントにサウナ室の非常事態が伝わらない状態になっていた事が報じられました。高級個室サウナ店にもかかわらず安全面が杜撰だったことから、この報道は世間に衝撃を与えました。この報道を知った世の中の多くの方が、「店側の消防法違反」を疑ったことと思いますが、実はサウナ室の非常用ボタンに関して消防法は無関係です。さらに言えばサウナ室に非常用ボタンの設置を義務付けている法律もありません。現状でサウナ室の非常用ボタンは、法的にどのような位置づけになっているのか? 分かりやすく解説します。

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消防法でサウナ室に設置が義務付けられている警報装置とは

UnsplashのClay Banksが撮影した写真
「東京消防庁」はサウナ設備の警報装置として「政令第21条に定める自動火災報知設備」の設置を求めていますが、この警報装置は、学校、病院、工場、事業所、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、など規模の大きな建物、施設に設置が必要とされているものなので、規模の小さなサウナ店等には以下の警報装置の設置を義務付けています。
| 警報装置 | 設置場所 |
定温式スポット型感知器(公称作動温度150℃以下)![]() 画像出典:「火報屋」のホームページより ※定温式スポット型感知器とは、周囲の温度が設定温度に達した時に火災信号を発する火災報知器。煙や湯気には反応しない。 | サウナ室内 |
| 定温式スポット型感知器が作動したサウナ室を表示する受信装置 (表示はサウナ室ごとに専用とする) ![]() 画像出典:「火報屋」のホームページより | スタッフが常駐する場所(フロント等) |
| 定温式スポット型感知器の作動と連動した音響装置(スピーカー) ※受信装置にスピーカーが内蔵されています | スタッフが常駐する場所(フロント等) |
| 音響装置(スピーカー) ※60dB以上出るもの | サウナ室内 ※熱の影響が少ない出入口付近、または腰掛の下の床に近い位置等に設置 |
| 建物内の人に火災発生を知らせる音響装置(非常ベル) | スタッフが常駐する場所(フロント等) |
小規模サウナ店に設置義務のある警報装置
サウナ室内に
利用者が押して異常や非常事態を知らせる
非常用ボタンの設置は
義務付けられていません!
今回の個室サウナの火事で問題視されている非常用ボタンは、火事報道とセットで報じられていることから、「非常用ボタンの電源が切られていたこと = 消防法違反」ととらえられがちですが、上記のように、消防法ではサウナ室内に非常ボタンという形式の警報装置の設置を義務付けてはいません。
サウナ室に非常用ボタンの設置を促しているのは「公衆浴場法」

おがさわらが撮影した画像
サウナ室内に非常用ボタンの設置を促しているのは、「公衆浴場法」です。「公衆浴場法」は銭湯やサウナ、健康ランド等の公衆浴場の衛生と風紀を保つための法律です。
この「公衆浴場法」の中に、サウナ室内に非常用ボタンの設置義務について書かれているかと言ったら、書かれていないんですよ。サウナ室内の非常用ボタンの設置については、「公衆浴場法」を管轄している厚生労働省が出している「公衆浴場における衛生等管理要領」の中に記載があります。
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施設設備
サウナ室又はサウナ設備(蒸気又は熱気のもの)を設ける場合
1 サウナ室は、男女を区別し、床面、内壁及び天井は、耐熱性の材料を用いて築造すること。
2 サウナ室の床面は、排水が容易に行えるようおおむね100分の1.5以上の適当な勾配を付け、隙間がなく、清掃が容易に行える構造であること。
また、室内には、掃除の際に使用される水が完全に屋外に排出できるよう排水口を設けること。
3 サウナ室又はサウナ設備の蒸気又は熱気の放出口、放熱パイプは、直接入浴者の身体に接触しない構造であること。
また、入浴者が接触するおそれのあるところに金属部分がある場合は、断熱材で覆う等の安全措置を講ずること。
4 サウナ室は、換気を適切に行うため、給気口は室内の最も低い床面に近接する適当な位置に設け、排気口は天井に近接する適当な位置に設けること。
5 サウナ室又はサウナ設備の適温を保つため、温度調節設備を備えること。
6 サウナ室又はサウナ設備には、サウナの利用基準温度を表示し、温度計を適当な位置に設置し、必要に応じて湿度計を設置すること。
7 サウナ室の室内を容易に見通すことができる窓を適当な位置に設けること。また、入浴者の安全のため、室内には、非常用ブザー等を入浴者の見やすい場所に設けること。引用:厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領」より
この記載は「公衆浴場における衛生等管理要領」の記載であり、「公衆浴場法」に記載されているわけではないので法的な強制力はなく、非常用ボタンの設置は推奨に留まるということになります。
火事を起こした東京・赤坂の高級個室サウナ店は旅館業なので、「公衆浴場法」も適用されない

TicTacが撮影した画像
今回火事を出した、東京・赤坂の高級個室サウナ店は旅館として申請し保健所から営業許可を受けている施設なので、縛られる法律は旅館業法と言うことになります。
なぜ、宿泊しない個室サウナが旅館扱いなの?
という疑問については下記の別記事で詳しく解説していますのでそちらをお読みください。

「旅館業法」にもサウナ室内に非常用ボタンを設置することに関しては何も記載されていません。「旅館業法」の管轄も厚生労働省で、厚生労働省が出している「旅館業における衛生等管理要領」にサウナを設置する場合の施設設備の基準が記載されていますが、サウナ室内の非常ボタンについては何も書かれていません。
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結論 サウナ室内の非常用ボタンは法的に設置が義務付けられたものではない
今回の東京・赤坂の高級個室サウナの火事では、サウナ室内に設置された非常用ボタンの電源が切られ、中に閉じ込められたと思われるご夫婦のSOSが店のスタッフに届かなかったことが問題視されていますが、現在の法律の立て付けでは、サウナ室内の非常用ボタンについて規制する法律は何もないということになります。
これまで、日本におけるサウナの業態は公衆浴場にサウナが設置されるケースがほとんどで、不特定多数の人が利用する施設でした。仮にサウナ室に非常用ボタンが設置されていなくても、利用者が具合が悪くなるなどした際は、他の利用客が気付いて対処出来ていたと考えられます。現在までに、非常用ボタンの設置が義務化されていないのは、これまでの一般的なサウナで大事故が起こっていなかったからではないかと思われます。
今回のような、完全プライベートを謳った個室サウナは、コロナ流行と共に発生したもので、最近になって増えて来た業態といえます。さらに芸能人などがサウナについて発信をし始めたことで一大サウナブームが巻き起こり、サウナについて熟知していないし事業者がサウナ業界に参入し始めた事も今回の事故に繋がった可能性もあります。今回の火事は、個室サウナの安全性を網羅した法整備がまだ不十分な段階で起きてしまった悲劇と言わざるを得ません。
他の利用者や施設の管理者の目が届かない個室サウナは安全性の面で大きな問題があることが浮き彫りになりました。今後、サウナ室の非常用ボタンの設置が義務化されるだけでなく、個室サウナに対する規制がより厳しくなることになるのは間違いないでしょう。
火事を出したサウナ店のサウナ室になぜ非常用ボタンがあったのか?
ここで疑問に思うのは、
火事を出したサウナ店のサウナ室内に
使いもしない非常用ボタンがなぜあったのか?
という点です。
そもそも設置義務のない非常用ボタンをなぜ設置したのか? 報道によれば、サウナ店開業当時から、店のオーナーも、スタッフも非常用ボタンの電源を一度も入れた事が無いと語っているわけですから、「サウナの危険性」に対処するための装置としてわざわざ設置したものではないと思われます。
今回火事を出した
個室サウナ店のサウナ室内に
非常用ボタンがあったのは、
かつてこの建物が
「産後ケアハウス」として
利用されていたことに由来する
と考えられます。
火事を出した個室サウナは
2020年5月まで「産後ケアハウス」だった
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「テレ朝NEWS」によると、今回火事を出した個室サウナ店は以前は民泊だったと報じています。その民泊をリノベーションして高級個室サウナに作り替えたわけですが、実は民泊の前は、助産院を併設した「産後ケアハウス」だった事が判明しました。※民泊として建物が利用されていたのは約1年ほどと思われます。

Bostan Nataliaが撮影した画像
「産後ケアハウス」とは、生後すぐから生後半年くらいまでの赤ちゃんがいるお母さんをサポートする宿泊型の施設です。助産院と一体化したこの「産後ケアハウス」は24時間体制の母子のサポートを売りにしていたことから、客室内の浴室にも非常用ボタンの設置があった可能性が高いです。(※「ベビーカレンダー」のホームページ参照)
この助産院を併設した「産後ケアハウス」は2012年10月に開院、2020年5月末に閉院しています。2012年以前のこの場所をグーグルストリートビューで確認すると2階建ての一般住宅が建っていることから、助産院を併設した「産後ケアハウス」は建物を新築したと考えられます。と言うことは、浴室の非常用ボタンも新築工事の際に配線され設置されたものと考えられます。
閉院後、短い期間民泊として利用されましたが、非常用ボタンの設備は撤去されずに引き継がれたと考えられます。しかし、民泊でも非常用ボタンの利用はなかったのではないでしょうか。そのため民泊でも非常用ボタンの電源が入れられることが無いまま、現在の個室サウナのオーナーの手に建物がわたり、建物の引継ぎでも、民泊オーナーからきちんとした説明を受けていなかったのかもしれません。
しかし、民泊から個室サウナにリノベーションした施工業者は、もとからある非常用ボタンの設備を潰すのももったいないと考えたのかもしれません。施工業者は非常用ボタンをそのままサウナ室に設置したと考えられます。施工業者は、サウナの危険性について理解していたので、非常用ボタンの設置は当然のことと考えたのかもしれません。
ですが、個室サウナのオーナーは、個室サウナの危険性について深く考えていなかったために、非常用ボタンの運用を行わなかったということなのかもしれません。
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まとめ
12月15日に東京・赤坂で起きた高級個室サウナの火事で、非常用ボタンが作動しなかったことを受けて、非常用ボタンは法的にどのような位置づけになっているかについて解説しました。また、利用していない非常用ボタンがなぜサウナ室にあったのかについても過去の建物の利用経歴から推測しました。
今回の個室サウナの火事は、サウナ業界全体に影を落とすものとなるでしょう。一気に広がったサウナブームが急に終わっても不思議ではありません。サウナの安全対策もこれまで以上に厳しくなることが予想されます。サウナ室の出入り口のレバー式のドアノブも禁止になるでしょうね。
今回の火事で亡くなられたご夫婦のご冥福をお祈りいたします。
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