8月16日に放送されたTBS日曜劇場「VIVANT」第14話で、警視庁公安部の野崎守(演 阿部寛) が、別班隊員5名を「中国の別班」と言われる「Xinxi(シンシー)」のハン・リンシン(樊林杏/演 宮下今日子) に50億円と引き換えに売り渡すという衝撃的なシーンが描かれました。「Xinxi(シンシー)」に引き渡された別班隊員5名は、すでに厳しい尋問を受けた様子で、顔は腫れあがり、拘束された状態で吊るされるといった過酷な扱いを受けていました。このような描写が、実在する中国を想起させる形で描かれている点について、視聴者の間では「国際問題に発展しない? 大丈夫なの?」といった懸念の声も見られます。本記事では、ドラマ「VIVANT」シーズン2の設定に潜む危うさについて、考察していきたいと思います。

(※画像はイメージ)
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近年の「スパイ映画」は実在する国や政府を悪役として描かないのが主流
スパイ映画というジャンルは、かつては「西側 vs 特定の敵国」という構図がわかりやすいドラマとして成立していました。しかし近年では、特定の国や政府を明確な「敵」「悪役」として描かないことが主流になっています。背景にあるのが、世界配給・世界配信を前提とした制作スタイルです。
実在する国を名指しで敵役にしてしまうと、その国での上映・配信が禁止されたり、興行的に大きな市場を失ったりするリスクがあるため、架空の国家や組織を敵役に設定したり、実在する国名を出す場合でも「国家そのもの」ではなく「一部の過激な組織」や「暴走した個人」に責任を負わせる構成にするなど、現実の外交問題や市場リスクを避けた脚本づくりが一般的です。
スパイ映画の最高峰作品と言える「007/シリーズ」や「ミッション・インポシブル/シリーズ」でもその配慮が見られます。
映画「007 スペクター」
近年のスパイ映画の敵組織の設定
| 作品 | 敵 |
| 007/シリーズ | 初期作品の敵「スメルシュ」 ※架空のソ連の諜報機関 近年の作品の敵「スペクター」 ※どこの国にも、政治イデオロギーにも属さない非政治的な犯罪組織 |
| ミッション・インポシブル/シリーズ | 「シンジケート」 ※架空の多国籍非政府諜報機関兼テロ組織。国に見放された諜報員たちが集まった組織。 「神の使徒」 ※解体された「シンジケート」の残党が組織したテロ組織 |
映画「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」
また、アメリカの映画「イコライザー/シリーズ」ではCIAを退官した主人公ロバート・マッコールが彼の身の回りで起きるトラブルを解決するストーリーですが、2023年公開の「イコライザー THE FINAL」はその舞台がイタリアのシチリア島になり、島のマフィアと戦う構図になりました。シチリア島は実在する島ですが、舞台となった町は架空の町でしたし、敵は国家ではなく「マフィア」で、言って見れば反社の組織でしたから、イタリアのシチリア島のイメージを激しく毀損するものではありませんでした。
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【VIVANTシーズン2】別班の敵を中国の組織にして大丈夫?
ドラマ「VIVANT」第14話で、日本国内で入院治療中だった別班隊員4名と、バルカに滞在していた別班・黒須駿(演 松坂桃李) の拉致を実行させたのが、警視庁公安部の野崎守(演 阿部寛) であったことが描かれました。野崎は、別班隊員5名の身柄をゴルバド共和国に本拠地を置く多国籍民間情報機関の「Xinxi(シンシー)」に50億円と引き換えに売り渡しています。
ゴルバド共和国のどこかの施設に5名の別班隊員が集められ、すでに厳しい尋問を受け、吊るされた様子は視聴者に強い衝撃を与えました。
吊るされる別班隊員たち
🔴 #VIVANT 放送中 ⚫️
— 日曜劇場『VIVANT』【公式】 (@TBS_VIVANT) August 16, 2026
別班員が変わり果てた姿に#VIVANTep14 pic.twitter.com/R3KR66Ll3n
ゴルバド共和国は、コーカサス地方に実在する国、アゼルバイジャンの東側にカスピ海を埋め立てて増設された架空の国です。別班隊員を拉致したのも架空の民間組織の「Xinxi(シンシー)」であれば、近年の「スパイ映画」制作のセオリーでもある「実在する国や政府を悪役にしない」に沿っているかのように思えます。

しかし、「Xinxi(シンシー)」の責任者、ハン・リンシン(樊林杏/演 宮下今日子)は中国人を想起する名前であり、衣装も中国風。ゴルバド共和国の「Xinxi(シンシー)」の本拠地内にあるハン・リンシンの執務室も中国風のインテリア。そしてハン・リンシンの父は10年前まで「党の幹部」だったとしています。「中国共産党」とは言っていませんが、この場面で「党」と言うのであれば、多くの視聴者は「中国共産党」をイメージするでしょう。その後に、ハン・リンシン自身も元中国公安部第6局局長だったとしていて、こちらは「元中国公安部」と名指ししています。
そして極めつけが、劇中で太田梨歩(演 花岡すみれ) が「Xinxi(シンシー)ってなんですか?」と質問した際に、別班のAIシステム「AIハヤト」が「簡単に言えば、中国の別班のような組織だ」と答えています。ドラマ「VIVANT」において、ここが非常に危うい、大丈夫なの? と思われる点です。
ドラマ「VIVANT」シーズン1では陸上自衛隊の別班は、日本国の非公認の組織ながら日本の国防の中枢で活躍する組織で日本が安全だと言われているのは、別班が未然にテロを防いできたからだという説明がなされています。ドラマを観ている視聴者も、別班を暴走する危険な組織とは認識しておらず日本の影のヒーロー的な存在として受け止めている事でしょう。
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そして、「『Xinxi(シンシー)』が中国の別班のような組織」と言う設定にするのであれば、「Xinxi(シンシー)」はまさに中国の組織だと認識する視聴者が大多数になると考えられます。その「Xinxi(シンシー)」が、拉致した5名の別班隊員にさらなる厳しい尋問を繰り返すとなれば、中国という国に対し嫌悪感を抱く視聴者が続出してもおかしくありません。
📸 #VIVANTep14 📸
— 日曜劇場『VIVANT』【公式】 (@TBS_VIVANT) August 19, 2026
「お前の出迎えだ」
別班員・黒須は中国の諜報部隊
「シンシー」に拉致され瀕死状態に
そんな黒須が連れられた場所には
十字架に磔にされ
変わり果てた別班員たちの姿があった#VIVANT 15話放送まであと3日📺✨ pic.twitter.com/I3s1Kho3Ee
「TBSは踏み込み過ぎじゃない? 大丈夫?」
という視聴者の意見も散見されます。
中国政府がTBSに対し、抗議するのではないか?
と気が気でありません。
ドラマ「VIVANT」第13話~第14話で実在する国、イスラエルも登場させました。イスラエルも政治的に非常にデリケートに扱うべき国の一つと言えます。第13話のラストで、公安を裏切った野崎が、別班の情報を売り渡そうとした相手が、まるでイスラエルの組織(諜報機関) であるかのような演出がなされたまま、話の続きが次週に持ち越されました。
イスラエルで野崎が接触した諜報員(?) ピョードル
このシーンを観た、視聴者の多くは、野崎はイスラエルの実在する諜報機関「モサド」に別班の情報を売ったのではないかと考えたはずです。第14話で、そうではなかったことが判明しますが、1週間またぎでイスラエルと言う国の印象を悪くしかねない演出を施すのは、どうかと思うんですよ。
まとめ
ドラマ「VIVANT」第14話で、シーズン2の別班の敵が中国であるかのような演出が見られました。ドラマの設定上は、「Xinxi(シンシー)」の本拠地は架空の国・ゴルバド共和国としていますが、ドラマの演出から「Xinxi(シンシー)」が中国の組織であることがありありと伝わってきています。これは近年のスパイ映画やドラマの制作のセオリーからずれてしまっていないか、大丈夫なの? と心配になります。
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せっかく架空の国、ゴルバド共和国を設定しているならその国を敵にすべきではないかと考えます。仮に、「Xinxi(シンシー)」のハン・リンシン(樊林杏/演 宮下今日子) がノゴーン・ベキ(演 役所広司) のような義賊であったとしても、これだけ中国的な演出を行った上で、別班隊員5名に対し、目をそむけたくなるほどの危害を加えていたとするなら、中国のイメージを毀損しかねません。ドラマの最後に「このドラマはフィクションです。登場する国家、団体、人物、名称等は実在するものとは関係ありません。登場する架空の組織も、実在する組織、宗教等とは一切関係しないものです。」と注意書きはされていますが、今後何かしらのトラブルになる可能性は捨てきれません。
中国は高市首相の台湾を巡る発言に対しても、非常に神経質になっており抗議してきていますから、今、日本で大注目になっているドラマ「VIVANT」にも苦言を呈するのか? 注目です。
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