なぜ強気?百条委蹴散らす田久保市長「完全逃げ切りシナリオ」

学歴詐称疑惑で揺れている静岡県伊東市の田久保真紀市長。伊東市の百条委員会は7月18日の期日で、田久保伊東市長に「卒業証書」の提出を請求していましたが、田久保伊東市長は「卒業証書」の提出を断固として拒否。拒否理由は、自身が公職選挙法違反で刑事告発されている点を挙げ、「卒業証書が自分にとって不利な証拠になり得る」として憲法38条1項に記された「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」という条文を盾に取った徹底防御の体制となりました。一連の疑惑をさらに深めるかのようなこの振舞い、それでもなお、強気の田久保伊東市長。田久保伊東市長が自身の罪を認めないのはなぜなのか? 本記事では田久保伊東市長が法的に罪に問われないまま「完全逃げ切り」できてしまうシナリオは存在するのか?その可能性を考察します。

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【結論】田久保市長「完全逃げ切りシナリオ」は存在する!

伊東市百条委員会に「卒業証書」の提出を迫られていた田久保伊東市長でしたが、提出の期日となる7月18日に回答書のみを提出、「卒業証書」の提出を断固拒否しました。拒否の理由は、卒業証書が自分にとって不利な証拠になり得るというものでした。これは半ば自らの罪、「有印私文書偽造と行使の罪」を認めるような行動です。しかし百条委員会の請求を拒否するには正当な理由が必要となるため、田久保伊東市長は多少の泥をかぶってでも正当な理由を提示する必要がありました。自ら罪は認めない(自白はしない) が、「卒業証書が自分にとって不利な証拠になり得る」という点までは譲歩して認め、憲法38条1項に記された「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」という条文を盾にしたという事です。百条委員会側は、ある意味正直に振舞っている田久保伊東市長の言い分から、この拒否理由は正当と認めざるを得ないと推測します。実にしたたかな作戦です。

なぜ田久保伊東市長は逃げ切れる？立件を阻む「2つの高い壁」

田久保伊東市長は百条委員会から求められた「卒業証書」の提出を拒否するという、かけられた疑惑をさらに深める行動をとりつつも、なぜか強気の姿勢を変えていません。なぜ田久保伊東市長は、すでに追い詰められているともいえる状況で自らの罪を認めようとしないのか? それは田久保伊東市長には完全逃げ切りのシナリオがあるからだと思われます。

立件を阻む壁その1／公職選挙法違反(学歴詐称) は立証困難?

学歴詐称で公職選挙法違反を問うには、その構成要件として「当選を得又は得させる目的をもつて」という前提が必要になります。伊東市の広報誌「広報いとう／7月号」には田久保伊東市長のプロフィールで「東洋大学法学部卒業」と明記されていますが、この広報誌は市長選挙後に作製されたもので、市長選挙で「当選を得又は得させる目的をもつて」なされたものではないとされるでしょう。

田久保伊東市長は、前回の市長選の選挙公報においても、かつての市議選の選挙公報においても学歴を記載していませんでした。選挙公報に詐称した学歴を掲載していれば一発アウトでしたが、選挙公報に掲載されていないとなると、公職選挙法違反を立証するのは難しくなります。

選挙期間中に唯一、田久保伊東市長が学歴詐称の記述をしたのが各報道メディアが選挙の候補者の経歴を調査するための調査票でした。田久保伊東市長は、この経歴調査票を選挙期間中に数枚書いていますが、最終学歴に「東洋大学法学部経営法学科・卒」と記入しています。

各メディアの経歴調査票

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確かに、この件はつっこみどころではありますが、この経歴調査票を基に、どこかのメディアが田久保伊東市長の最終学歴を「東洋大学卒業」と報じていた事実があれば、公職選挙法違反の立証は可能になるかもしれません。しかし、現時点でそのような報道があったとは確認されておらず、どのメディアも田久保伊東市長の学歴には触れていなかったと思われます。

以上の事から、田久保伊東市長サイドは、公職選挙法違反(学歴詐称) を立証するのは困難だろうと踏んでいると推測します。

立件を阻む壁その2／有印私文書偽造・行使罪の「証拠隠滅」

世間が最も注目している、田久保伊東市長の有印私文書偽造と行使の罪の疑惑ですが、7月18日に田久保伊東市長が「卒業証書」の提出拒否の理由として、憲法38条1項に記された「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」という条文を持ち出した時点で、有印私文書偽造と行使の罪の立証は困難だと言わざるを得ません。なぜ立証困難なのか? 以下で解説します。

当初、7月7日の記者会見では、田久保伊東市長は潔さをアピールするために「卒業証書は静岡地検に提出し、真贋鑑定してもらう」と発表していました。しかしこれは、まだ事件として立件されてもいない件で田久保伊東市長が「卒業証書」を静岡地検に提出しても静岡地検は「卒業証書」を受け取らないだろうと予想した上でのパフォーマンスだったと考えられます。

7月7日の時点で、伊東市民が田久保伊東市長を公職選挙法違反(学歴詐称)で伊東署に刑事告発したという情報も出ていましたが、田久保伊東市長サイドは上記に記した通り、公職選挙法違反(学歴詐称) での立件は難しいだろうという判断から、この告発を伊東署は受理せず突き返すだろうと予想したと思われます。

しかし、7月18日になってもこの刑事告発は正式に受理とはならないまでも、突き返されることもなく宙ぶらりんの状態になっています。伊東署は、田久保伊東市長が提出する「卒業証書」を待って、証拠を押さえた上で刑事告発を受理するつもりだったかもしれません。

しかし、「卒業証書」は提出されませんでした。今後、刑事告発が受理される可能性も出て来たことから、田久保伊東市長サイドは、「卒業証書を静岡地検に提出する」という潔さアピールから大転換し、「卒業証書が自分にとって不利な証拠になり得る」と言い出しました。

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弁護士は、業務上委託を受けたもので、依頼者の秘密に関するものを保管している場合、強制捜査で捜査機関が令状に基づきこれを差し押さえようとしても、押収を拒むことができます。これが刑事訴訟法で認められた「押収拒絶権」です。

現在、田久保伊東市長の「卒業証書」はその代理人弁護士の手にあるとされています。田久保伊東市長が「卒業証書が自分にとって不利な証拠になり得る」と発言したからには、代理人弁護士は押収拒絶権を発動することは間違いないと思われます。

という事は、
有印私文書偽造と行使の罪の決定的証拠となる
偽造卒業証書は
永久に表に出てこない
という事になります。

となると、警察や検察が有印私文書偽造と行使の罪について捜査しても、「伊東市議の議長、副議長がチラッとだけ卒業証書を見せられた」とか、「秘書広報課課長が卒業証書を確認したけれどもコピーをとっていない」などの状況証拠だけでは、有印私文書偽造と行使の罪を立件するのは困難と言わざるを得ない、という事なんですよ。

これが、
田久保伊東市長の
逃げ切りのシナリオです!!

しかしこのシナリオは完全ではありません。田久保伊東市長を追い詰める唯一の突破口があるんですよ。

田久保伊東市長を追い詰める唯一の突破口! 「虚偽公文書作成罪」という最後の砦

これまでの報道ではほとんど報じられていませんが、田久保伊東市長には「虚偽公文書作成罪」の容疑もかけられています。「虚偽公文書作成罪」とは、公務員がその職務に関し、公文書に虚偽の記載をした場合に問われる罪です。伊東市の広報誌「広報いとう／7月号」は公文書に当たります。この「広報いとう／7月号」の田久保伊東市長のプロフィール欄には「東洋大学法学部卒業」と明記されています。

これは誤記ではなく明らかな虚偽記載と言えます。

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「広報いとう／7月号」

この記事の作成を担当した秘書広報課課長は、田久保伊東市長が提示した大学の卒業証書によって学歴のファクトチェックを行い、原稿完成後、印刷にかける前にもう一度、田久保伊東市長に記事内容を確認してもらったと百条委員会で証言しています。

この一連の経緯から、田久保伊東市長が積極的に虚偽公文書作成に関わっており、「虚偽公文書作成罪」を立証できる可能性は極めて高いと言えます。この罪で無罪放免となる可能性は低いです。

「広報いとう／7月号」は署名のない公文書なので罰則は刑法の155条、156条によると「3年以下の拘禁刑又は20万円以下の罰金」となります。

田久保伊東市長は「虚偽公文書作成罪」で有罪となり拘禁刑の判決となった場合は伊東市長職を失職します。罰金刑であれば、伊東市長職の失職はありません。

要するに、
田久保伊東市長の完全逃げ切りのシナリオは
「虚偽公文書作成罪」を罰金刑でしのげるかどうか
で決まると言えます。
そしてこれは全て
代理人の福島正洋弁護士の腕次第
という事になるんですよ。

伊東市の田久保真紀市長の代理人弁護士(右)

時系列で考察／田久保伊東市長サイドの戦略

田久保伊東市長サイドの戦略

7月2日　記者会見	田久保市長は東洋大学を卒業しておらず除籍されていたと発表。
7月7日　記者会見	・偽造を疑われた「卒業証書」を静岡地検に提出すると発表。しかしこれは、事件にもなっていない市長の学歴詐称疑惑で「卒業証書」が静岡地検に提出されても静岡地検は受理しないだろうという想定の下に行われたパフォーマンス。 ・潔い姿勢を伊東市民にアピールして出直し選挙に出馬し、再選されれば禊は済んだと主張するつもりだったと推測される。 ・伊東市民が田久保伊東市長を公職選挙法違反で刑事告発したと連絡を受けるも、証拠不足で警察は受理しないだろうと田久保伊東市長サイドは高をくくっていたか? ・警察が動かない限り、田久保伊東市長の東洋大学の除籍理由も開示されないはず、とこちらも高をくくっていた可能性あり。(※田久保伊東市長の大学除籍理由については別記事で詳しくまとめています。)
7月18日　記者会見	・百条委員会に提出を迫られていた「卒業証書」の提出拒否。拒否理由は「卒業証書が自分にとって不利な証拠になり得る」為と説明。 ・受理されないと思っていた公職選挙法違反の刑事告発が受理される可能性が出てきたため、証拠となる「卒業証書」を静岡地検にも百条委員会にも提出できなくなり、弁護士に保管依頼する。弁護士は「押収拒絶権」を発動し、「卒業証書」の証拠隠滅に成功する。

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田久保伊東市長は、当初、学歴詐称の責任を取って市長職を辞職し次の市長選挙に出馬すると明言していました。田久保伊東市長が出直し選挙に出馬すればかなり高い確率で再選される可能性がありました。(※その件については下記の別記事にまとめてありますので詳しくはそちらをお読みください)

しかし、世間でこれほどまでに騒がれたことで、状況が変わったと思われます。次の市長選挙は馬鹿らしくてやってられないと棄権する伊東市民が多数出ると予想される事から、田久保伊東市長は市長辞職を撤回し、このまま市長の座に居続ける事になると推測します。なぜなら、選挙の投票率が極端に低くなれば、次の市長選挙に立候補を表明している前市長の組織票がモノを言う形になり、田久保伊東市長の再選が困難となる為です。

騒動が世間にここまで注目されず、「卒業証書」を静岡地検に提出するというパフォーマンスで時間を稼ぎながら、市長選挙に突入し再選される、と言うのが当初の田久保伊東市長サイドの逃げ切りシナリオだったと思われます。早い段階で市長選挙にもつれ込めば、広報誌の「虚偽公文書作成罪」についてはうやむやにできた可能性があります。

しかし、今や、田久保伊東市長を追い詰めるにはこの「虚偽公文書作成罪」しかないという状況に陥っています。「虚偽公文書作成罪」を罰金刑で乗り切れれば、田久保伊東市長の完全逃げ切りシナリオが完成し、田久保伊東市長は4年の任期を全うするでしょう。一方、拘禁刑(執行猶予も含む) なら市長職を失職し、伊東市議会サイドの勝利となります。

どちらの結果になるかは、
田久保伊東市長の代理人・福島正洋弁護士の手腕に
かかっています。

田久保伊東市長を追い詰めるには伊東警察署の意気込み次第

伊東市伊東警察署長／村岡稔益氏

田久保伊東市長の罪を立証するには、捜査を担当する静岡県伊東市の伊東警察署の方たちの意気込み次第ではないかと考えます。世間をこれほどまでに騒がし、伊東市の価値を貶めた田久保伊東市長に対し、何が何でも犯罪を立件するぞという意気込みがあれば、決定的な証拠だった「卒業証書」を封印されてしまったとしても、「卒業証書」を偽造した業者を摘発し、そこから証拠をつかむという手法も考えられますが、可能性としては限りなく低いと言わざるを得ません。

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しかし、警察が積極的に動けば、田久保伊東市長の大学の除籍理由ははっきりするはずです。本記事では田久保伊東市長の大学除籍理由は、「大学休学の限度を超えた為」と推測しています。詳しくは下記の別記事をご参照ください。

田久保伊東市長の東洋大学の除籍理由が判明すれば、田久保伊東市長の新たな嘘が発覚する可能性があり、次の伊東市長選挙の結果に大きな影響を及ぼす事になるかもしれません。

しかし、警察は過去の某大物政治家の学歴詐称疑惑の際、忖度からか全く手も足も出さなかったという不名誉な事実があります。今回の田久保伊東市長の学歴詐称疑惑で警察が派手に捜査を展開すると、過去のその某大物政治家の学歴詐称疑惑が再燃しかねないという理由から、警察は積極的に捜査しない可能性も無きにしも非ずです。

まとめ

学歴詐称、有印私文書偽造・行使罪などの容疑が掛けられている静岡県伊東市の田久保真紀市長は、7月18日に、百条委員会から提出を迫られていた「卒業証書」を提出拒否しました。一見追い詰められたかに見える田久保伊東市長ですが、自らの罪を認めることもなく、なおも強気な姿勢を崩していません。なぜ、田久保伊東市長が強気でいられるのか? 田久保伊東市長の完全逃げ切りのシナリオとはどういったものか? について考察し解説しました。

今回、伊東市側に対応の不手際があったとしたら、学歴詐称が疑われる怪文書が届いた後に、田久保伊東市長の卒業証書を目にする機会があったにもかかわらず、コピーも画像の撮影も行わなかったことだと言えるでしょう。また、代理人弁護士を立てた田久保伊東市長に対して、弁護士を立てずに伊東市が対応し続けた事です。法律に詳しい助っ人が伊東市には早い段階から必要でした。

今後百条委員会は、田久保伊東市長本人の出頭や、東洋大学への除籍理由の問い合わせを検討しているようですが、田久保伊東市長本人の出頭は、市長自身が憲法38条1項を持ち出している時点で同じ理由で拒否するでしょうし、東洋大学も警察の正式な捜査協力依頼でもなければ個人情報は開示しないものと思われます。伊東市百条委員会は一日も早く弁護士をチームに加える必要がありそうです。今後の展開に注目です。

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